4月に開業7周年を迎える銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX」では、2024年4月5日(金)より、春のプロモーション 「GINZA SIX DOKI DOKI 2024」を開催。躍動するエネルギー、あふれる熱量を彷彿とさせる鮮烈なツートーンのビジュアルのエントランスを通り抜ければ、頭上ではヤノベケンジ氏の新作アート「BIG CAT BANG」が人々を出迎えます。今回、Gen de Artはアーティストのヤノベケンジ氏とアート・プロデューサーの後藤繁雄氏に、今展示の背景や作品の持つメッセージについてお話を伺いました。
―今回のGINZA SIXでの巨大インスタレーション作品「BIG CAT BANG」の構想を立てた経緯や背景について教えてください。
(後藤繁雄氏)
ここの商業施設で展示をすることになった経緯をお話しすると、Ginza Sixは商業施設としては東京や銀座の1番象徴的な場所ですよね。商業施設でアートを展示する場合、デコレーションのように作品を扱うか、他から作品を持ってきて展示するみたいな場合がすごく多いんです。そうではなく、社会に対してGinza Sixのような商業施設がその枠組みを超えて、いわゆるパブリックなメッセージを発することがとても重要だと思うんです。というのも、アーティストと商業施設がコラボレーションをして今までに無いメッセージを作り出せるかどうかが非常に重要です。ここにはハイブランドもたくさん入っていますが、最近ではハイブランドもコンテンポラリーアートとのコラボレーションを活発に行っていますよね。つまり、それより大きな時代に対する何らかのメッセージを提出する必要があると僕自身は強く思います。宇宙的な視点とでしたり、これからの不安な世の中がど!のように展開していくかに対して希望の物語を提出するっていうことをアーティストがビジョンを持ってやらなければいけないのです。ここが一番重要なポイントで、プロデュースする側としてはそれにふさわしいアーティストを選んで相談させていただいて、コミュニケーションをとって、今回ヤノベさんは「今までにない作品、今までで一番最高傑作だ」と、それをアーティスト本人が言っているわけですから、僕としてはこんなに幸せなことはないですよね。計画から1年半ぐらいかけて取り組んできましたが、一つの作品を作るのに時間をかけて、議論して、技術的な部分での不可能なところはたくさんありますが、それも克服してくれるような制作チームと出会えたことは大きかったですね。
(ヤノベケンジ氏)
飛んでいる猫の作品ですが、これは元々2017年からスタートした「Ship‘s Cat」という作品キャラクターです。つまり船乗り猫、ある種旅する猫なんですが、この由来として、猫というのはネズミを取る習性から、エジプトで家畜化されてその後、船に乗せられて世界中に広まっていた動物でもあるんですね。要するに、ネズミが食料を食べたり疫病を流行らせるのを防ぐために、猫が船に乗って船の守り神のような存在あるいは、船員の心の癒しにもなりました。そうして猫は世界中に広まって行ったのですが、この物語を作品のテーマに組み込んで、ちょうどコロナ禍で移動できない時代に旅をすることを希望する、あるいは若者の多様な精神を後押しする人々を守りながら、希望を与えているような存在として作り始めたのがShip’s Catです。今回後藤さんとGinza Sixさんのこの展示の話を受けたときに、希望の象徴をこの時代にどう繋げるかを慎重に考えました。つまり、現代は僕から見ると、既に地球的危機を迎えています。疫病が蔓延して、戦争の時代に突入して、いろんな生命が奪われていく危機的状況に際して、何か発信したいと考え、多くの人が見に来る商業施設の中で、命の問題を扱いたいと考え始めてたのが今作品に繋がっています。
BIG CAT BANGは、一見猫大爆発という本当にインパクトのあるインスタレーションに見えますが、ある僕の妄想ストーリーの一つの場面を表しています。その妄想ストーリーとは、命はどこから来てどこに行くのかという、基本的なストーリーが元になっています。地球上に生命が宿ったのが35億年前と言われていて、その生命は学説では基本的に、地球上から生まれたアミノ酸が発生して、海の中で生まれたという説もありますが、最近は隕石にそのアミノ酸が付着して地球に到達し、そこから生命が生まれとも言われています。これはパンスペルミア説と言うのですが、これを今回のインスタレーションの根幹にして生命を運んできたのが実は猫、宇宙猫と呼ばれる「Space Ship’s Cat」で、それが乗り込んでいた宇宙船が、太陽の塔の形をしたルカ号で、そのルカ号から生命のない地球に生命を宿らせるために宇宙猫が四方八方に飛び散っている様子が表現されたインスタレーションです。宇宙猫が命を育みながら現在まで到達して、その人類が生まれた頃には疲れ果てて滅びていく。実際、太陽の塔は今大阪の万博会場にもありますが、それは実は宇宙船だったのではないか、という少しミステリアスな虚構のストーリーみたいなものを作っています。ですから、現実なのか虚構なのか分からないのですが、実はその本質には今現在の地球の問題、世界の問題も組み込まれているのです。一見、面白いインスタレーションに見えますが、実は深い現在の問題を訴えているのが、この作品の根幹にありますね。
説明を聞かないと理解できない部分を多いとは思いますが、ここのインスタレーションに関しては、岡本太郎さんが「芸術は爆発だ」という言葉を残したように、イマジネーションが炸裂して、人々の想像力を掻き立てながら、物をクリエイトしていく種のようなものを与えるイメージですから、単純に「わあ、すごい猫がたくさん爆発してる!面白いな!真ん中の宇宙船は何だろう」のように作品を楽しんで、自分なりの物語を紡いでいただければ良いかなと思っています。
―今後の創作活動の方向性や挑戦してみたいことがあれば教えてください。
(ヤノベケンジ氏)
今後挑戦していきたいものは具体的にたくさんあるのですが、やはり僕自身がこの真ん中にある太陽の塔を1970年の大阪万博のときに作られた当時、僕が幼少の頃からずっと見ていた巨大な彫刻作品だったんですね。その太陽の塔を見て、僕自身はいろんな想像力、クリエイティブなエネルギーをもらったので、僕自身がもうすぐ太陽の塔を作られた岡本太郎さんの年齢に近づいていることもあり、最近は自分が作るものが多くの人のイマジネーションを刺激して、モノをクリエイトしていくエネルギーみたいなものになっていければいいなという強い思いがあります。自分がモノを作るというよりも、たくさんの人が自分が作るものによってエネルギーが広がっていくような現象をどんどん起こしていきたいと思っています。
ヤノベケンジ「BIG CAT BANG」
会期:2024年4月5日〜2025年夏(予定)
会場:GINZA SIX 2F 中央吹き抜け
住所:東京都中央区銀座6-10-1
個展「ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と」(仮)
会期:2024年7月12日〜11月10日
会場:岡本太郎記念館
住所:東京都港区南青山6-1-19
写真の提供:ヤノベケンジ
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