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茶禅華: 伝統・現在・未来×中庸

2020年ミシュラン三ツ星を獲得した「茶禅華」は伝統的な中国料理と日本料理の調和を楽しめるレストランです。中国料理を知り尽くしたお客様が「伝統的な中国料理」と絶賛する茶禅華。オーナーシェフである川田智也さんにお話をお伺いしました。

川田智也さん

中国料理の壮大さに憧れて

小さいころ家族で四川料理を食べた経験が、料理人の道を進むきっかけとなりました。料理そのものの美味しさはさることながら、盛り付けの美しさの奥にある壮大なスケールを感じたのです。その経験から幼少期でありながらも料理人になりたいと、両親には話していたようでした。


18歳になる頃にはさらに夢が膨らみ、料理の世界に進むことを決意しました。プロの世界に行くことを決めた時、自分が大好きな中国料理を極めたいと中国料理の世界に飛び込んだのです。


父は会社を経営していましたが、継ぐように言われたことはありません。厳しい世界でやっていく覚悟があるなら、やりたいようにやりなさいと言われていました。子どもが自分で選ぶことを大事にしてくれていたのだと思います。


中国料理と日本料理の調和

中国料理と日本料理の最大の違いは素材です。日本料理には日本の素材に合った調理法があります。中国料理も同じく中国の素材に対して作られた調理法があります。しかしどちらも食材に合った考え方やアプローチ、精神性など、共通点はありながらも全く“似て非なるもの”なのです。


私の大切にしている“和魂漢才”という言葉があります。中国から伝来されたものの中から本質を読み取り、日本の精神性で新たなものを創造していくという意味が込められています。僕は、中国料理をベースに、日本人というアイデンティティーを柱にして、新たな料理を想像し表現していくことを目指しています。中国料理人の自分と日本人の自分。この二つをいかに調和させ見出し、表現していくか。これが僕自身のテーマになっています。

料理においては、中国料理と日本料理の美しい調和をめざしています。陰陽太極図のような黒の中に白、白の中に黒がある、そんな調和を目指しています。そのためには一つひとつの黒や白をしっかり理解することが重要です。そのうえで素材に対し調理方法は中国料理なのか日本料理なのか。または両者の調和なのか、いつも三択で判断しながら料理を表現するようにしています。


中国料理を表現するうえでは“淡”という言葉も欠かせない要素の一つです。語源は川に太陽の日が差し込み、川面と光の間に蒸気が揺らめいている、この空間を中国人は“淡”と表現したようです。


太陽という炎、川という水、この二つの間に生まれる揺らぎの空間。この空間こそが料理の中庸、まさに足すことも引くこともできない状態が、料理にとって最高の状態と言えます。“淡”とは炎と水をのバランスを絶妙に保ち、素材本来の天性を引き出すことと言えるのです。



お茶の世界に魅せられて

水は料理にとって欠かせない重要な素材です。中国や台湾の茶葉を使って日本の水で出すというオリジナリティーを大切にしています。日本にある豊富な水とお茶の掛け算で無限の世界が想像できます。


お茶は調味料が介在せずとも立体的な味をつくり出せます。ある意味料理の究極の姿と言えるでしょう。料理の極意は自然と人の調和だと考えています。まさにそれを体現している“お茶の世界のような中華料理を作りたい”という想いを込めてお店を「茶禅華」と名付けました。


お茶には6つの発酵段階があります。修業時代に中国の何千種類もあるお茶とコースを一緒に提供したいと思っていました。当時ティーペアリングを提供しているお店もありませんでしたが、修業していくうちに少しずつ形になり、実現することができました。


料理の品格は二人の恩師から

修業時代には「麻布 長江」の長坂松夫さんから”中国料理の壮大なスケール観”を「日本料理 龍吟」の山本征治さんからは”日本料理の豊かさ”をそれぞれ学びました。お二方に共通するのは「今の時代だからこそ出来る事をしっかりやって、未来にどう繋げていくか」そして「伝統・現在・未来の三つの時間軸のバランス」の考え方です。この考え方が料理に品格をもたらしているのだと思います。

お客様に感動を与えられる料理人に

また「なぜ」と問いかけることも大事です。私自身の信念も「なぜ日本人なのに中国料理をしているのか」を問いかけることで、料理人としての柱が確固たるものになっていきました。


そして海外研修では、それぞれの文化はその土地に住んでいる人が心地よく感じるものこそが残っているということを学びました。たとえば「ラーメンと餃子が一番おいしい」と感じる日本の感覚そのものも、大切にしなくてはならないということです。皆さんが良く知っている料理であってもまさに“目から鱗“と思わせる料理や”似て非なるもの”を作れる料理人がお客様に感動を与えられると思っています。


ティーカウンター

中庸と時間軸のバランスこそ茶禅華の真骨頂

お店で使っているお皿は中国、日本、台湾で統一しています。日本の作家さんでも和魂漢才の考えをお持ちの方は多くいらっしゃるのです。そのなかでも茶禅華では、陶磁器作家の梶原大敬さん・山本長左さんの器などを使用させていただいています。それぞれ中国から伝来した“青磁”や“呉須”を貴重にされていて、中国の伝統も感じることができます。


お店に来て下さる中国人のお客様のなかには「すごく伝統的な中国料理をいただいているような雰囲気がある。あなたはもっとイノベーティブを提供していると思いここに来たが、あなたの目指すところはそこではないのですね」と言っていただくことがよくあります。私にとっては非常にありがたく嬉しい誉め言葉です。


中国料理を知っている方ほど、茶禅華をよく理解していただけると思っています。まさにこれが僕の実現したい中国料理の世界なのです。三つの時間軸のバランスが整った中国料理をこれからも作り続けていきたいと思っています。

 

Sazenka茶禅華

〒106-0047

4-7-5,Minamiazabu, Minato-ku, Tokyo, Japan

東京都港区南麻布4-7-5

TEL:03-3188-8819

https://sazenka.com

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