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和の郷愁と西洋の調和─「AREA」代表 野田豪の家具哲学

郷愁の「和」のテイストを取り入れた家具で多くの人を魅了する家具ブランド「AREA」(本社・東京都港区)の代表でメインデザイナーの野田豪氏。東海大学を卒業後、建材会社、家具メーカーを経て神奈川・茅ケ崎の小さな店からスタートし、今では東京、大阪、米・ニューヨーク、仏・パリの3カ国4都市に出店。世界的家具ブランドとして飛躍、成長させる家具界の第一人者が原点と哲学を語りました。


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NODA Japan 代表取締役会長 野田豪氏


野田さんのデザインは、クラシックなデザインに深く根ざしたミニマルなアプローチで評価されていますが、制作における野田様の哲学と、「直線に隠された曲線」というコンセプトのインスピレーションについて教えてください。

定かに決まっているわけではありませんが、京都の龍安寺という世界遺産にもなっている石庭という禅寺からインスパイアされた部分もあると思います。そもそも日本のお庭は、山から美しい風景を見た時に、その場で見た風景をそのまま自分の家の前に持ってきたいと考えたのが始まりで、流れる川の様子や山々、波といった一連の風景をミニチュアにして再現して作られたものです。その日本庭園を、さらに記号化させていく方法論の中で禅寺のようなものが出来上がります。これは日本人の一種の得意分野で、ピクトグラム(絵文字、絵記号)のように対象物を抽象化していくことによって禅寺は生まれました。家具は元々直線的な部分が多いですが、そこに人間の身体の曲線を落とし込んで制作している点に、禅寺が反映されていると思います。

 

歴史考証と日本文化を組み合わせた独自のデザイン手法について、具体的な例やインスピレーションの源を教えてください。

AREAの特徴に、家具に絵を載せるというデザイン手法があります。その代表的な家具が「Board Hashirama」で、斉藤上太郎さんやFujiyoshiBrother's(フジヨシブラザーズ)さんの絵を載せています。ここに辿り着くまでは、色々なことにチャレンジしたい気持ちやそれを実現できる能力を持ち合わせていたおかげで、様々な方向性で制作を行なうことができました。

「Board Hashirama」を制作するに至った背景には、京都の二条城があります。二条城を訪れた際に、鶯張の廊下を歩いて中の部屋を見ていたのですが、その襖絵や板絵に描かれた日本画の美しさに圧倒されたんです。これを見て、京都からの帰り道に、家具に反映させたらどうかと考えて制作したのが「Board Hashirama」でした。アパレルではグラフィックが使用されているのは当たり前ですが、それと同じ方向性で家具についても考えた時に、アートと家具のコラボレーションには無限の可能性があることを発見しました。今後は「Board Hashirama」と並行して、アジアの建築をミニチュアにして、そのまま家具に落とし込んでいくプロジェクトも実現させる予定です。


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デザインへのアプローチを大きく形作った特定の作品やアーティストはいらっしゃいますか?

家具からは少し離れますが、デヴィッド・ボウイ、クイーンの楽曲が好きで学生時代からよく聴いていました。特に、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」は大のお気に入りで、彼らは中学時代から私のヒーローでした。基本的には、グラムロックに振り分けられる楽曲が好きで、オペラをロックの中に取り組んでいるというか、クラシックにロックを融合させている点に魅力を感じていました。この一見相反するような要素を渦を巻いて融合させるという点では、現在の家具の制作に影響を与えているかもしれません。直接的な影響ではありませんが、現在の歴史考証と日本文化を組み合わせた独自のデザインは、こうした楽曲から間接的に影響を受けていると思います。

 

今後、「AREA」が目指す目標とその実現に向けてどのような取り組みを行っていくか教えてください。

現状、日本には世界的に有名な家具インテリアブランドが存在しません。また、日本だけでなく、世界には各国を代表するインテリアブランドがあまり存在しません。そのため、世界では日本の家具の実態など全く認識されていないんです。AREAは現在世界に拠点を広げていますが、その各地で日本の文化を背景とした家具を販売していきたいと考えています。ゆくゆくは、AREAを日本を代表するインテリアブランドに成長させたいですね。

 

大学生のとき、将来の進路を家具屋と小説家で迷っていた野田氏。家具屋の道を選び、現在に至るまで家具制作を行い続けてきた彼は、家具を小説を執筆するように制作すると言います。そうした小説のように紡ぎ出される逸品の数々が国を超えて人々の身体を優しく包み、癒し、時に力付け、感動すら与えてくれるのです。



 

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