「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」

国立西洋美術館（東京・上野）｜2026年3月28日（土）～6月14日（日）

葛飾北斎「富嶽三十六景　神奈川沖浪裏」1830～33（天保１ー４）年頃ー大判錦絵　国立西洋美術館（井内コレクションより寄託）

イメージが神話となったとき、私たちはそれをどのようにして再び「見る」ことができるのだろうか？

2026年春、東京・上野の国立西洋美術館にて、「北斎　冨嶽三十六景　井内コレクションより」展が開催される。本展では、葛飾北斎による風景画の金字塔『冨嶽三十六景』より、全46図に加え、藍摺による稀少な「青富士」と、保存状態の優れた「神奈川沖浪裏」の異摺2点を含む、計48点が初めて一堂に公開される。

これは単なる歴史的回顧展ではない。同じ図像でありながら、摺りの色味や紙質、圧の違い、経年変化によってまったく異なる視覚体験が立ち上がる。見ることの不確かさ、複製という文化技術の揺らぎ、そして図像が時代と地理を超えてどのように移動するのか——本展は、そうした問いを静かに投げかける。

北斎が印象派やゴッホに与えた影響はよく知られている。しかし本展は、その文脈にとどまらない。西洋美術を専門とする国立西洋美術館の空間に北斎を再配置することで、彼の表現をグローバルな視覚文化の中心として再考する試みである。

また本展は、バルト海沿岸の国リトアニアを代表する画家、ミカロユス・チュルリョーニスの神秘的思索を紹介する。「チュルリョーニス展　内なる星図」と同時開催される。風景を背景ではなく、内面の比喩として描いたふたりの芸術家による、時空を超えた詩的な対話が交差する。

上左：葛飾北斎「富嶽三十六景　山下白雨　1830～33（天保１ー４）年頃ー大判錦絵　国立西洋美術館（井内コレクションより寄託）

上右：葛飾北斎「富嶽三十六景　五百らかん寺さゞゐどう」1830～33（天保１ー４）年頃ー大判錦絵　国立西洋美術館（井内コレクションより寄託）

下左：葛飾北「富嶽三十六景　東海道程ヶ谷」1830～33（天保１ー４）年頃ー大判錦絵　国立西洋美術館（井内コレクションより寄託）

下右：葛飾北斎「富嶽三十六景　凱風快晴」1830～33（天保１ー４）年頃ー大判錦絵　国立西洋美術館（井内コレクションより寄託）

展覧会情報

展覧会名：北斎　冨嶽三十六景　井内コレクションより

会場：国立西洋美術館 企画展示室 B3F（東京都台東区上野公園7-7）

会期：2026年3月28日（土）～6月14日（日）

主催：国立西洋美術館、読売新聞社

協力：西洋美術振興財団

監修：樋口一貴（十文字学園女子大学 教授／国立西洋美術館 客員研究員）

公式サイト：https://www.nmwa.go.jp/en/exhibitions/2026hokusai.html

同時開催：「チュルリョーニス展　内なる星図」