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「虎白」 - 食材と和の融合が新たな和食の扉を開ける

神楽坂にある「虎白」は2016年~2022年の6年連続でミシュラン3つ星を獲得した名店。足を運ぶごとに新たな発見を与え、感動的で新しい虎白の日本食は国内外から多くのファンが訪れます。新世界が味わえる虎白の店主、小泉瑚佑慈さんにお話を伺いました。

小泉瑚佑慈さん

食材にとらわれない新しい日本料理を追い求めて

虎白では何でも良いわけではなく、日本料理の枠の中に納まっていることが重要だと思っています。


食材の組み合わせやおいしさは無限にあります。そして基本になる伝統料理はもちろん素晴らしいです。しかし、新しい食材と日本料理を組み合わせてそれでもなお、日本料理を感じていただけることを念頭に置いて料理を表現しています。



ベースになる出汁との組み

合わせが新たなストーリーを生む

キャビアやフカヒレなど、インパクトの強い食材を日本料理に合わせるときにバランスを取る秘訣は出汁です。カツオと昆布の出汁をメインにして使っていますが、組み合わせる食材は出汁を含ませて香りをつけ、洋や中華などの食材も“和”に落とし込んでいきます。

そして旬の食材は必ず使うようにしています。出汁がベースになって、新しいものを組み合わせるのが、私のスタイルといえますね。


出汁のうまみを活かす水には、白神山地の世界一の軟水を使っています。料理に水は欠かせませんが、料理や出汁、店で使っている昆布と鰹節や調味料 との相性があると思っています。そのため軟水を含めて全国のお水を取り寄せて調べてみたのです。料理のお水として、最適かどうか全部ひと通り試してきました。その中で虎白の昆布と鰹節に会うのは、白神山地の水だということが分かったのです。



虎白だけの、新しいジャンルの日本食を

日本料理に新たな要素を取り込もうと思ったのは、「ほかで楽しめない、ほかにはない料理を作ろう」と思ったのがきっかけ。今ではいろいろなお店で創作和食というジャンルが確立されていますが、2008年に虎白がオープンしたころは、日本料理にフォアグラやキャビアなどを使って料理を表現しているお店は少なかったと思います。だから料理に挑むなら、他にはない新しいスタイルやジャンルのようなものをやってみたいと思いました。


「石かわ」との差別化ではなく、ほかの日本料理店では味わえない虎白だけの料理を楽しんでいただきたいという想いが今もあります。


常に旬のものを一番おいしく感動的に

虎白では以前に提供した同じメニューが今年も出るということはなく、常に新しいものを提供しています。


それは、前年よりも自分自身が経験したことが料理に反映されると考えているからです。一年間いろいろなものに触れ、前に進めていると思うので。過ごしてきた経験をもとに今一番良いと思う食材を皿の上で表現するという感覚で作っています。

虎白ではお刺身もお醤油とわさびではなく、さまざまな薬味の入った秘伝のジュレを添えて提供します。お造りも組み合わせや盛り付けを変えて、秘伝のジュレがいわば定番のスペシャリテとなっています。


一見日本料理とかけ離れたような食材であっても取り入れてみると、おいしさの枠や幅が広がると考えています。


虎白のスペシャリテで、鮎が筒の器にまるで飛び込んでいるように盛りつけた料理があります。こちらもトリュフと出汁をベースに牛乳と少しのバターに薄口醤油を加えています。見た目はホワイトソースのようですが、召し上がっていただくと和の風味を味わっていただけます。鮎の持つ苦みはトリュフと相性がすごく良いということを知るとおいしさの幅がぐっと広がり、感動さえ覚えるのです。

デザートはフルーツをシンプルにお出しせず、旬のものを使いながら常に新しい表現ができるよう工夫しています。今も6月からお出しするスイカを使ったデザートの試作をしていたところです。


小豆を裏ごしして冷製スープのようなベースに、炒って香ばしくあられのような香りのする塩の氷と旬のスイカとジュンサイを加えています。ジュンサイはデザー トには使わない食材ですが触感がスルスルとしていて、後口もさっぱりしているので美味しいのです。塩とスイカの相性は抜群ですよね。デザートも料理と同じように、組み合わせや食感、香りも楽しんでいただけるように工夫を凝らしています。

意識しているのは、「甘さは重くならないように」というところ。日本料理の後においしく味わっていただける甘味を意識し、全体的なコントラストや構成を考えています。お越しいただくお客様はデザートまで楽しみにしてくださっている方が多いですね。


潜在的に刻まれた

様式美の記憶は母から

料理の道に進むきっかけは、高校の友人が料理の専門学校へ学校見学にいくのに一緒に行ったことです。専門学校の修学旅行で高級料理店を巡った経験が初めて日本料理に触れる機会になりました。


当時は食べたことがない日本料理を前に「何を感じた」というよりも、日本料理そのものが「よくわからなかった」のが正直な感想でした。

でも季節感や器、盛り付けや飾りつけ、皆敷(かいしき)で季節を表現しているのは、美しく素敵だと、琴線に触れたこと覚えています。これからこういう仕事をしてみたいと自分の将来の方向性が決まったように思いました。

私の母は着物の着付けやお茶、華道など日本的なことを好む人で、私が幼少期の休日や夏休みにはいろいろな美術館や伝統工芸品などを観に連れて行ってもらっていました。

そんなことも、いつのまにか影響を受けていたのかもしれません。

季節を感じさせる器やしつらえなど、日本の伝統文化が日本料理には詰 まっているので。そうした日本的な様式美に対する思いや自分のセンス は料理人になってから実際に感じる瞬間がありました。

今は個展や骨董などのお店に行くこともあります。器以外にも美しいものに触れる機会を大切に、 日々意識して過ごしています


店内は本物にあふれるアート空間

店内の装飾や美術品は高仲健一さんにオープンのときにお願いして作っていただきました。当店では個室の用意はありません。それでもお客様に肩ひじ張らずにリラックスして過ごしていただきたい。料理も店内も品格の中に温かみを感じられ、視覚的に楽しんでいただけるような空間づくりを意識しています。


店内のデザインは、アーキヴィジョンの広谷純弘さんに依頼しました。お客様に非日常を味わっていただく別空間を演出できるように提案してくださって、私のイメージを形にしてくれています。


グループのメンバーは家族

私にとって石かわグループは、長く一緒にいるので仲間でありながら家族のような関係です。私が学校を卒業して入社した店の料理長だった師匠の石川(石川秀樹氏)は、特に長く一緒にいますね。


うちのチームは仲間、いえ家族として互いを思いやれるメンバーがそろっています。チームワークの良さや互いを思いやれる雰囲気は、お客様に伝わるものです。チームのみんながいい雰囲気で、やりがいを感じながら楽しんで仕事ができないと、お客様への幸せな時間や空間を絶対に提供できないと思っています。私はこれからも「虎白」で働いてよかったと思ってもらえる場所づくりを続けていきたいと思っています。

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