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メゾン・ルイ・ジャド社クリスティーヌ・ボトン氏へのインタビュー

メゾン・ルイ・ジャド(以下ルイ・ジャド社)は、ブルゴーニュ地方のコート・ドール県でも最も格式

高いとされるワインハウスです。醸造士フレデリック・バルニエをトップに、ブルゴーニュのワインといえばこれだという高級ワインを造り続けています。ルイ・ジャド社のワインは、自らが誇りとするブルゴーニュの真のテロワールの特徴を、それぞれのワインを通じて表現することを目指しています。実際に、製造過程においては自然を最大限尊重し、人の介入をなるべく抑えた手法が重視されています。また、ルイ・ジャド社は

手広いワイン製造が特徴で、安価なブルゴーニュワインやボジョレーワインから、コート・ド・ボーヌやシャブリ、グラン・クリュワインまで優れたワインを提供する作り手として広く知られています。


小規模だった設立当初

ルイ・ジャド社は、1859年に由緒あるブドウ栽培家としての歴史を有するジャド家のルイ・アンリ・ドゥニ・ジャドによりブルゴーニュ地方ボーヌにて創設されました。ジャド家はもともとベルギー出身で、1794年にボーヌへ移り住み、プルミエ・クリュやグラン・クリュのヴィンヤードを所有しました。ドメーヌ設立以前から良質な畑だったため、ビンニャードでのブドウ栽培は堅調で、ジャド自身も前向きに将来を見据えてワイン造りに挑めました。ジャドはまずワインセラーやヴィンヤードにて経験を積みワインについての見識を深めていきました。


創設当時よりルイ・ジャド社のラベルには、ギリシャ神話に登場するワインの神様「バッカス」のデザインが描かれています。ルイ・ジャド本社も、絵画のように美しいボーヌの街で当時と変わらぬ外観で残っています。また、とある時から所有するヴィンヤードを急激に拡大し、現在では528エーカーもの自社畑を所有するブルゴーニュ有数の大ドメーヌとなりました。ワイン造りでは、自社だけでなく他社の栽培家のブドウを使用し、ブルゴーニュ地方全体のヴィンヤード農家をはじめ地域のワイン造りの活性化に寄与する大きな存在として世界中で認知されいます。


現在のルイ・ジャド社の社長であるピエール・アンリ・ガジェは、1988年に入社し、わずか3年後の1991年に先代である父から社長業を引き継ぎました。彼は、ブルゴーニュ地方から伝わる自然の特徴を生かした伝統的な手法を大切にし、丁寧な醸造を心掛けています。「ルイ・ジャド社は、社のブランドを主張するのではなく、常にヴィンヤードとテロワールを尊重したワイン造りを最優先しています。テロワールの存在そのものを受け入れてきたからこそ、社は大きくなっていったのでしょう。」とピエール氏は話します。


Head winemaker Frederic Barnier
Winemaker Christine Botton

ルイ・ジャド社の哲学

どんなに経営が上手くいったとしても、ルイ・ジャド社は自然をありのままに尊重し、品質に妥協しない当初の姿勢を貫きます。すべてのブルゴーニュ地方のワインメーカーたちもこの哲学に理解を示し、丁寧に熟成過程に力を注ぎます。ルイ・ジャド社との親交が長いワインメーカーであるクリスティーヌ・ボトン氏は、「私たちはワインの未来、つまり熟成にかける可能性を信じています。熟成はとても大切な工程です。他社のワインは完成してから最初の5年から10年間はおいしく飲める一方で、私たちのワインは5年から10年経ってからさらにおいしくなるのが特徴です。」ジャド社の熟成は、セラー管理からマセラシオン(醸し段階)天然酵母の選定、温度管理などの手法において基本不干渉で、他のワインメーカーがそれぞれのワインを表現し、長い将来にわたってそのテロワールの良さを維持してくことを目的としています。ボトン氏自身もワイン愛好家で、個人的には最低10年もののフルボディーワインが好きだと話します。「中でも、私はプレミア・クリュが大好きです・・・いつもこのワインを飲んでいますよ。」


ワインメーカーへの研修

ワインの世界に足を踏み入れる前、農業経営について学んでいたボトン氏は、ヴィンヤードの経営についてもより実践的に理解をしています。「ワインとヴィンヤードの関係性から土と天候の関係性までワインの取り巻く様々な繋がりに関心があります。」彼女は、ワイン造りには自然を尊重することが大切であり、これがルイ・ジャド社と他社との差別化のポイントだと話します。彼女はまた、ワイン造りの芸術性や伝統、さらには新しい試みの探求に熱心に取り組んでいます。彼女自身、ジャド社にて研修を受けた後、ディジョンにてワインを学び、その後プロの利き酒師となりました。ルイ・ジャド社では、テイスティングは重要な段階の一つで、様々な段階でテイスティングが行われています。「ワインの声を聴くのが一番大切」とボトン氏は話します。


「ワイン造りは同じ年の繰り返しではありません。毎年新しいことに挑戦して常に良いワンとは何か、を皆模索しています。私自身1986年にワイン産業で働き始めたのですがこの考えはブルゴーニュ地方だけにとどまらず、どのワインメーカーにも当てまることです。その結果、どのワインもそれぞれの特徴があり、だから面白いんです。これはとても大切な考えだと思います。」



自然に耳を傾ける

気候変動は、ブドウの収穫時期から出来上がりの味に至るまで、ヴィンヤードにとって非常に大きな問題です。「30年前は10月頃にブドウを収穫していたのが普通だったのですが、今では9月15日前後に収穫するのが一般的になりました。でも、ブドウはより熟して甘くなっていて質は良くなっていると思います。昔はワインに砂糖を入れて加工していた時期があったほどですから。今はブドウに十分な甘さがあり、その必要はありません。また、ブドウの酸味のバランスも良くなってきたと思います。」とボトン氏は話します。


ワイン造りに同じ年などはなく、毎年ワインの味がどうなるかは完璧に予想することはできないとボトン氏は続けます。「自然の声を聴くのが一番大切です。どんなワインを造りたいか具体的な理想を持っていても、それ通りにいくことはありません。広い心で受け入れるのです。」さらに、ルイ・ジャド社でかつて作られたユルシュルのワインについて「ユルシュルのブドウの収穫が早かった時があったんです。そのため、ブドウはひどく乾燥していて皆が早く醸造をしなければと言っていました。しかし、実際は工程をいつも通りに進めてワイン造りをすることができました。すべてのワインは違うからこそ良い。我々はこの思いをお客様に伝えていきたいと思っています。良いワインが出来


るときもあれば、時々ちょっと個性的なワインができてしまうこともある。ワインは常に良いものだという考えでなく、いろんな可能性を秘めている赤ちゃんのような存在なんです!」



もちろん、気候変動の問題は会社にとっても大きな挑戦でもあります。しかし、ルイ・ジャド社は今後起こりうるどんな環境にも立ち向かい挑戦していけるはずだ、とボトン氏は強調します。また、昨年の収穫について「8月19日というとても早い時期に収穫を行いました。でも、結果的にはブドウのバランスは非常に良く、収穫は少なかったものの酸味が少なく良いワインになるはずです。」と教えてくれました。


ワイン造りの芸術性

ルイ・ジャド社にとって「ワインとアートは同じものです。ワインを飲むと、様々な感情が溢れ出します。絵を見ても同じです。ワインとアートは人々に何かを感じさせ、感動を与えるために作られるのです。」とボトン氏は話します。伝統的手法と自然への畏敬の念を重視した繊細な技術とテクノロジーを織り交ぜたルイ・ジャド社のワインも、そんなアートの一つだと言えます。

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