ART OSAKA 2026――大阪から見えてくる現代美術の現在地
- 6月4日
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急速な都市変化が進む大阪において、ART OSAKA 2026は、現代美術を地域的文脈と国際的視点の双方から捉え直す場として存在感を示した。

2002年に創設されたART OSAKAは、日本で最も長い歴史を持つ現代美術フェアである。2026年は、6つの国と地域、15都市から60ギャラリーが参加。会場は、大阪駅北側の再開発エリア「グラングリーン大阪」に位置するCongress Square Osakaと、北加賀屋のCreative Center Osakaの二拠点で構成された。急速に更新される都市中心部と、実験的芸術の拠点として独自の文化を育んできた港湾地区という異なる都市空間を往来する構成は、本年のART OSAKAを特徴づける一つの視点でもあった。
グラングリーン大阪内で開催された「Galleries Section」には、日本、韓国、香港、フィリピンなどから52ギャラリーが参加し、「Galleries」「Focus」「Wall」「Screening」の各セクションを通じて、東アジア圏における現代美術の動向を立体的に提示した。
ART OSAKAの特徴として挙げられるのは、日本国内にとどまらない地域的ネットワークへの継続的な視線である。関西および東京を拠点とするギャラリーに加え、韓国のGallery Shilla、Gallery Chosun、Woong Galleryなどが参加し、東アジアにおける現代美術の往来が自然な形で可視化されていた。
「Focus」セクションでは、Gallery Nomartが上田假奈代による個展形式の展示を行い、言葉、身体、土地の記憶をめぐる作家の実践が紹介された。また、Unfold Galleryは台湾出身のWei-Ni Luと日本の三宅由貴による二人展を展開し、異なる文化背景を持つ作家同士の感覚的な接点を示した。こうした展示は、単なる国際参加という枠組みを超え、地域間に存在する文化的対話の可能性を静かに示していたように見える。
一方、「Screening」セクションでは、西山修平、Park Bo Na、大崎のぶゆきらによる映像作品が紹介された。近年、ART OSAKAが継続的に取り組んでいるムービングイメージへの関心を背景に、本セクションでは時間性を伴う表現の存在感がより明確に示されていた。映像表現が現代美術の周縁的存在ではなく、一つの重要な言語として定着しつつある現在の状況を反映していたと言えるだろう。
対照的に、北加賀屋のCreative Center Osakaで開催された「Expanded Section」は、空間性とスケールをめぐる実験的試みの場となった。旧造船所を活用したこの施設は、工業的な建築空間そのものが展示体験に影響を与える場所でもある。一般的なアートフェアのブース形式では成立し得ない大型作品やインスタレーションを受け入れるために設計された本セクションには、15名の作家による13プロジェクトが展開された。
Tezukayama Galleryによる西本剛己《NOAH: Drafting a Room of Revival》は、その代表例である。旧製図室に設置された船体を想起させる巨大な構造物は、かつての造船所の歴史と空間的記憶に直接応答するものであり、展示空間と作品の関係性そのものを再考させる構成となっていた。
また、村本剛毅によるインタラクティブな映像インスタレーションや、台湾作家Lai Ko-Weiによる陶作品など、素材、身体性、参加性を扱う多様な実践も印象を残した。Expanded Sectionは、デジタル表現から素材に根差した制作まで、現代美術における表現の広がりを示す場として機能していた。
同時に、ART OSAKA 2026は現代美術フェアとしての機能に留まらず、美術史的な視点から日本の現代美術を再考する試みにも継続的に取り組んでいる。本年の特別展「Another 1990s ― 時空を超える関西のアーティストたち」は、その姿勢を象徴する企画であった。

会場内に設けられた本展では、児玉靖枝、松井紫朗、田島悦子ら、関西にゆかりを持つ作家たちの1990年代の実践に光が当てられた。バブル崩壊後の経済的停滞、社会構造の変化、さらには1995年の阪神・淡路大震災という経験を背景に形成された1990年代の表現は、日本の現代美術史において重要な転換点の一つとして位置づけられる。
近年、日本国内では20世紀後半の現代美術を再評価する動きが徐々に進んでいるが、本展が特徴的だったのは、それを「関西」という地域的視点から読み直そうとした点にある。東京中心の語りでは捉えきれない表現の多層性や、土地に根差した感覚を再考する姿勢は、ART OSAKAが単なるマーケットイベントではなく、文化的文脈を伴うプラットフォームであることを示していた。
Gen de Artの取材に対し、日本現代美術振興協会(APCA)理事であり、ART OSAKA実行委員会メンバーでもある加藤義夫氏は、1990年代について次のように語っている。
「1990年代は、日本の美術が国際舞台へ出ようと試み始めた時代でした。現在ではインターネットやSNSの普及により、アーティストにとっての機会は大きく広がっています。30年以上前と比べ、日本の美術を取り巻く環境は大きく変化しました。」
この言葉が示すように、「Another 1990s」は単なる回顧展ではない。戦後日本美術史を年代ごとに捉え直し、その時代に生まれた表現を現在の視点から再考する試みとして位置づけられている。
一方、本年のART OSAKAを語る上で見逃せないのが、大阪という都市の変化との関係性である。
Galleries Sectionの会場となったグラングリーン大阪は、JR大阪駅北側で進む大規模都市再開発プロジェクトの中心に位置する。都市機能、商業、ホテル、公共空間が交差する新たな都市環境の中で現代美術フェアが開催されたことは、ART OSAKAが単独のイベントとして存在するのではなく、大阪の都市文化形成の一部として位置づけられつつあることを示唆している。
また、Expanded Sectionが展開された北加賀屋には、Creative Center Osakaをはじめ、Super Studio KitakagayaやM@M(Morimura@Museum)など、現代美術に関わる活動拠点が集積している。観客はフェアを訪れることを通じて、作品を見るだけではなく、地域に形成された文化的エコシステムへ自然に接続される構造となっていた。
商業ギャラリーによる展示、空間を活用した大規模インスタレーション、そして美術史的な視点を伴う特別企画――。ART OSAKA 2026では、それらが並列的ではなく、一つの文脈として共存していた点が印象的である。
国際性を過度に強調することなく、同時に地域性へ閉じることもない。その均衡の中で、ART OSAKAは大阪という都市を通して、日本、そしてアジアの現代美術を見つめ直すための一つの視座を提示していた。



















