チームラボ バイオヴォルテックス 京都、2025年秋に開館──存在と環境の境界を溶かす、京都の新たな文化の渦
- Gen de Art
- Aug 6
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Updated: Aug 8
2025年10月、京都の文化地図に新たなランドマークが誕生する。アート集団チームラボによる常設ミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」が、京都市南区・京都駅東南エリアに開館するのだ。
その広さは、東京・豊洲の「「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」」や麻布台の「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」をも凌ぐ1万平方メートル超。しかし、このミュージアムの真の革新は、単なるスケールではない。ここでは、アートを通じて「存在とは何か」を問い直す、まったく新しい体験が待っている。
質量なき彫刻、「存在」は現象から生まれる
チームラボ バイオヴォルテックス 京都の中核を成すのは、「環境現象」というコンセプトのもと創られた。石や鉄のような物質ではなく、エネルギーや環境の秩序から生まれる現象そのものを作品とする試みだ。
「人間はこれまで、ガラス瓶でもiPhoneでも、“物体”を作ることで存在を生み出してきました。でも僕たちは、環境を設計し、そこにエネルギーの秩序を与えることで、現象が“存在”になるという考え方で作品を作っているんです」と、創設者の猪子寿之氏は語る。
たとえば《Massless Amorphous Sculpture》では、泡の海から浮かび上がる巨大な彫刻が、空間の中間に漂う。人が押しても動かず、壊れても自然に回復する――ただし、限界を超えると崩壊してしまう。それはまさに「境界があいまいで、環境に依存した存在」の象徴だ。

アートは、環境と共に“なる”もの
チームラボ バイオヴォルテックス 京都に展示される作品たちは、いずれも物理的な素材ではなく、「環境と認識」によって存在している。猪子氏はこう続ける。
「自分の命だって、食事や呼吸、つまり環境とのエネルギーのやりとりの中でしか存在できない。本当はこの世界の多くの“存在”がそうなんです。作品もまた、そうあるべきではないでしょうか。」
現象として生まれる作品は、人が訪れてはじめて成立する。《Traces of Life》では、鑑賞者の足跡が一時的な光の軌跡として空間に残され、やがて消えていく。人がいなければ、そこに作品は「存在しない」。
このような体験型作品は、teamLabが掲げる「認識上の彫刻 / Cognitive Sculpture」という概念の体現でもある。形がなくとも、私たちが感じ、認識することで“存在する”作品なのだ。
京都という文脈の中で
チームラボ バイオヴォルテックス 京都は、京都市が進める「京都駅東南部地域活性化プロジェクト」の一環として実現した。市有地に民間として長期借地し、文化創造拠点としての可能性を開いていく。
「この地域には、長い文化の連続性があります。過去の文化が蓄積されながら、新しい文化が生まれ続けてきた。僕たちのミュージアムも、その流れの中の一部として存在できたらうれしいです」と猪子氏。
このエリアには、京都市立芸術大学の移転予定地やスタジオも整備されており、地域全体が“文化都市の再構築”というビジョンの中で動いている。
「世界の見方」が広がる場所へ
チームラボの作品はいつも、鑑賞者を“観る人”から“関わる人”へと変えていく。そしてチームラボ バイオヴォルテックス 京都は、その体験をさらに深化させてくれる場所となるだろう。
「人間は、世界を“物体の集合”として認識しがちです。でも本当は、世界はもっと連続的で、流動的で、環境と切っても切り離せない。そんな新しい視点を、作品を通じて感じてくれたら。」
それはただのアート鑑賞ではない。存在の本質に触れる旅なのだ。

京都に、未来の文化が舞い降りる
「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」は、京都の伝統と革新のあいだに新たな橋を架け、これからのアートと存在の在り方を私たちに提示してくれる。2025年秋、世界がふたたび京都に注目する理由が、ここにある。
京都市南区東九条東岩本町21-5
JR京都駅 八条東口より徒歩7分