Watches and Wonders Geneva 2026
- Gen de Art
- 8 時間前
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街が舞台となり、時間が新たな姿を見せるとき

2026年4月14日から20日、ジュネーブは再び世界の視線を受け止める。しかし今年のウォッチズ・アンド・ワンダーズは、単なる再会ではない。街全体が静かに、しかし力強く目を覚まし、時計文化の深い歴史と未来への意志が同時に息づき始める瞬間である。開催以来最大規模となる66ものメゾンが集い、伝統と革新、遺産と冒険心がひとつの美しい地平に溶け合う。その中心には、ついに初参加を果たすオーデマ ピゲの存在がある。創業家の手によって受け継がれてきたル・ブラッシュの名門マニュファクチュールが加わることで、今年のサロンは静かに、しかし決定的に新章へと歩み出す。
主催者、ウオッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ財団CEO マチュー・ユメール氏は語る。
「2026年のウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブは、ジュネーブを世界の時計産業の中心地として確立する重要な節目です。街全体を巻き込む文化プログラムを通じ、世代を超えて多様で魅力的な体験を提供していきます。」
その言葉どおり、今年度は“サロン”という概念を越えて、街そのものが舞台となる。博物館、ギャラリー、アトリエ、歴史的建造物が連動し、時計文化が都市の鼓動とともに響き合う。歩くたびに新しい出会いがあり、曲がるたびに物語が続いてゆく。そんな体験型の都市絵巻が広がる。
サロン内部もまた新しい息吹に満ちている。独立系時計師やクラフトマンが集うカレ・デ・オルロジェはさらに広がり、多彩なクリエーターが新たな対話を紡ぐ空間へと進化する。メザニンの構成も一新され、老舗メゾンと新鋭の革新者たちが、序列ではなく共鳴としてそこに並ぶ。時を測る技術は、ここでひとつの芸術となり、ひとつの哲学となる。
未来を象徴する「LAB」では、初めて外部からの公募制度が導入された。スタートアップ、研究機関、そしてまだ名を知られていない未来の創造者たちが、オンラインで独自のプロジェクトを応募できるのだ。選ばれた者は会期中、世界の業界リーダーやコレクター、未来のパートナーの前で、自らのビジョンを提示する。新しい時間の形は、時として思いも寄らぬ場所から生まれる。その可能性を静かに開く仕組みである。

イベントはサロンの外へと溢れ出し、ジュネーブの街全体が時計文化の物語を紡ぎ出す。博物館の特別展、夜の街に灯るアフターイベント、若い世代へ向けたワークショップ。恒例の木曜夜には、都市と時間が柔らかく溶け合う幻想的な瞬間が訪れる。新たに導入される無料シャトルは、サロンと「In the City」を軽やかにつなぎ、街がひとつの連続した体験へと変貌する。
4日間のプロフェッショナル向けプログラムに続く3日間の一般公開。7日間の物語は、時計を“見る”だけの場ではなく、時間そのものを感じ、考え、味わうための舞台となる。ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2026。そこでは伝統と未来、職人の手と技術の革新、静寂と高揚がしなやかに交差し、時間が詩となって息づく。









