top of page

変化する日本酒、変わらない価値SAKE COMPETITION 2026から見えた次の時代

  • 1 day ago
  • 6 min read

2026年6月10日、「SAKE COMPETITION 2026」の表彰式がTAKANAWA GATEWAY CITYにて開催された。全国367の酒蔵から1,139点が出品された今年のコンペティションには、国税庁 酒類業振興・輸出促進室長の三上悦幸氏をはじめ、酒類業界、流通業界、交通・観光分野の関係者が集い、日本酒の現在地と未来について改めて考える機会となった。

 

本誌は5月に行われた決審会から表彰式まで継続して取材を行った。そこで見えてきたのは単なる受賞結果ではない。日本酒を取り巻く環境が大きく変化する中で、業界がどのような方向へ進もうとしているのか、その輪郭である。

 

2026年6月10日、「SAKE COMPETITION 2026」の表彰式がTAKANAWA GATEWAY CITYにて開催された。全国367の酒蔵から1,139点が出品された今年のコンペティションには、国税庁 酒類業振興・輸出促進室長の三上悦幸氏をはじめ、酒類業界、流通業界、交通・観光分野の関係者が集い、日本酒の現在地と未来について改めて考える機会となった。

 
@SAKE COMPETITION 2026

日本酒は次の局面に入ったのか

 

表彰式で三上氏は、日本酒の輸出が近年堅調に推移していることに触れた。国内市場では長期的な消費減少が続く一方、海外市場における認知は着実に拡大している。また、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、日本酒は単なる酒類商品ではなく、日本文化を象徴する存在として国際的な注目を集めるようになった。かつて日本酒業界の課題は国内市場の維持にあった。しかし現在、その視線は世界へ向けられている。輸出、観光、食文化、地域振興――日本酒はさまざまな分野と結びつきながら、新たな役割を担い始めている。

今回のSAKE COMPETITIONは、そうした変化を象徴する場でもあった。

 

ブランドではなく、酒そのものを見る

 

決審会の会場で、本誌はSAKE COMPETITION実行委員長であり、はせがわ酒店代表取締役社長の長谷川浩一氏に単独インタビューを行った。長谷川氏が繰り返し語ったのは、「ラベルではなく酒そのものを評価する」というコンペティションの理念である。ブランド名や蔵元名を伏せたブラインド審査は、今やSAKE COMPETITIONを象徴する仕組みとなっている。しかし、その目的は単なる公平性の確保ではない。「ラベルが

あると、どうしても思い入れが入ってしまう。本当に美味しい酒を選ぶためには、それを隠さなければならない。」酒蔵、研究者、技術者、ソムリエなど、多様な専門家が同じ条件のもとで酒を評価する。その厳格な審査体制は、日本酒の価値を改めて問い直す場でもある。また、長谷川氏は日本酒の国際化が進む一方で、「日本酒をもっと知る余地があるのは海外だけではなく、日本国内も同じだ」と語った。輸出拡大が注目される現在だからこそ、日本酒の本質的な価値をどのように伝えていくのか。その問いは、業界全体に向けられている。

 

2026年6月10日、「SAKE COMPETITION 2026」の表彰式がTAKANAWA GATEWAY CITYにて開催された。全国367の酒蔵から1,139点が出品された今年のコンペティションには、国税庁 酒類業振興・輸出促進室長の三上悦幸氏をはじめ、酒類業界、流通業界、交通・観光分野の関係者が集い、日本酒の現在地と未来について改めて考える機会となった。

 
@SAKE COMPETITION 2026

造り手は何を目指しているのか

 

決審会では、株式会社新澤醸造店代表取締役の新澤巖夫氏にも話を聞く機会があった。

「伯楽星」や「残響」で知られる新澤氏は、日本酒を単純な香りの競争で語るべきではないと指摘する。重要なのは、飲み続けられること、そして食事との調和である。近年、日本酒市場では華やかな香りや高精米歩合が注目されることも多い。しかし新澤氏は、日本酒本来の魅力は日常の食卓の中で発揮されるものだと考えている。その視点は、今回の受賞結果にも重なる。評価された酒の多くは単なるスペック競争ではなく、それぞれの蔵が長年追求してきた哲学や方向性を反映していた。

世界市場が拡大する今だからこそ、日本酒は何を守り、何を変えていくべきなのか。造り手たち自身もまた、その問いと向き合っている。

 

今西酒造が示した新しいスタンダード

 

今年の表彰式では、奈良県の今西酒造が特に注目を集めた。「みむろ杉 ろまんシリーズ Dio Abita」が純米酒部門で1位、「みむろ杉 ろまんシリーズ 純米吟醸 山田錦」が純米吟醸部門で1位を獲得し、さらにTAKANAWA GATEWAY CITYグランドオープン記念最優秀蔵元賞も受賞した。結果だけを見れば圧倒的な成功である。しかし注目すべきは、その背景にある酒造りの方向性だろう。奈良は日本酒文化の源流の一つとして知られる土地である。その奈良から生まれた「みむろ杉」は、伝統的な酒造りを土台としながらも、現代の飲み手との新しい接点を模索してきた。受賞後、今西将之氏は「信じられない気持ちです」と率直に語った。

今回の結果は、一つの酒蔵の成功であると同時に、日本酒の新しいスタンダードが生まれつつあることを示しているようにも見える。

 

純米大吟醸部門で1位を獲得した広島県の相原酒造もまた、今年を象徴する存在だった。代表取締役社長の相原章吾氏は、純米大吟醸部門の受賞に加え、ダイナースクラブ若手奨励賞も受賞した。表彰式では、AIを活用した酒造管理への取り組みにも言及している。発酵管理、人材育成、データ分析。酒造りは長らく経験と勘によって支えられてきた。しかし若い世代の経営者たちは、そこに新しい技術を積極的に取り入れようとしている。もちろん、日本酒は工業製品ではない。しかし伝統とテクノロジーは対立するものではなく、共存しながら新しい価値を生み出す可能性を持っている。今回の結果からは、世代交代が着実に進んでいる日本酒業界の姿も見えてきた。
@SAKE COMPETITION 2026

若い世代とテクノロジー

 

純米大吟醸部門で1位を獲得した広島県の相原酒造もまた、今年を象徴する存在だった。代表取締役社長の相原章吾氏は、純米大吟醸部門の受賞に加え、ダイナースクラブ若手奨励賞も受賞した。表彰式では、AIを活用した酒造管理への取り組みにも言及している。発酵管理、人材育成、データ分析。酒造りは長らく経験と勘によって支えられてきた。しかし若い世代の経営者たちは、そこに新しい技術を積極的に取り入れようとしている。もちろん、日本酒は工業製品ではない。しかし伝統とテクノロジーは対立するものではなく、共存しながら新しい価値を生み出す可能性を持っている。今回の結果からは、世代交代が着実に進んでいる日本酒業界の姿も見えてきた。

 

世界に向かう日本酒

 

モダンナチュラル部門で1位を受賞した宮城県の川敬商店は、同時にJAL空飛ぶSAKE賞も受賞した。JAL国際線ビジネスクラスへの採用は、単なる販路拡大ではない。日本酒が世界の食文化と出会う接点の一つでもある。近年、フランスやスペインをはじめとする欧州のレストランでは、日本酒をワインと並んで提案する動きも増えている。海外市場の拡大は、日本酒に新たな可能性をもたらしている。しかし、その可能性を支えるのは品質だけではない。背景にある文化、歴史、そして造り手の思想もまた重要な要素となる。日本酒は今、世界との対話を始めている。

 

モダンナチュラル部門で1位を受賞した宮城県の川敬商店は、同時にJAL空飛ぶSAKE賞も受賞した。JAL国際線ビジネスクラスへの採用は、単なる販路拡大ではない。日本酒が世界の食文化と出会う接点の一つでもある。近年、フランスやスペインをはじめとする欧州のレストランでは、日本酒をワインと並んで提案する動きも増えている。海外市場の拡大は、日本酒に新たな可能性をもたらしている。しかし、その可能性を支えるのは品質だけではない。背景にある文化、歴史、そして造り手の思想もまた重要な要素となる。日本酒は今、世界との対話を始めている。
@SAKE COMPETITION 2026

伝統は競争力になる

 

実行委員長賞を受賞した石川県吉田酒造店の「吉田蔵U 百万石乃白」は、そのことを象徴する存在だった。近年、日本酒の世界でも「テロワール」という言葉が語られることが増えている。しかし長谷川氏は、ワインと同じ文脈で日本酒を語ることには慎重な姿勢を示していた。

米、技術、発酵、そして造り手の思想。

日本酒は単純な地域性だけで説明できるものではない。それでも今回評価された酒の多くには、それぞれの土地や蔵の哲学が確かに存在していた。世界市場で競争する時代だからこそ、伝統は過去の遺産ではなく、新たな競争力として再評価されているのである。

 

日本酒の次の時代へ

 

表彰式の終盤では、純米酒部門で2位を受賞した福島県の笹正宗酒造が、6月初旬の火災によって酒蔵を全焼したことも紹介された。会場では再建支援への呼びかけが行われ、多くの関係者が耳を傾けていた。日本酒の未来を支えるのは、技術や市場だけではない。酒を造り続ける人々の存在があってこそ、その文化は次の世代へ受け継がれていく。SAKE COMPETITION 2026で見えたのは、一つの正解ではなかった。政策、評価、技術、伝統、そして国際市場。それぞれ異なる立場から日本酒に向き合う人々の姿を通して見えてきたのは、変化を受け入れながらも本質を見失わないという共通の姿勢だった。


日本酒をめぐる議論は、もはや一つの業界だけの話ではない。文化、観光、食、地域、そして国際交流。その交差点に立つ日本酒は、これからの日本文化が世界とどのように向き合っていくのかを映し出す存在でもある。

 

表彰式の終盤では、純米酒部門で2位を受賞した福島県の笹正宗酒造が、6月初旬の火災によって酒蔵を全焼したことも紹介された。会場では再建支援への呼びかけが行われ、多くの関係者が耳を傾けていた。日本酒の未来を支えるのは、技術や市場だけではない。酒を造り続ける人々の存在があってこそ、その文化は次の世代へ受け継がれていく。SAKE COMPETITION 2026で見えたのは、一つの正解ではなかった。政策、評価、技術、伝統、そして国際市場。それぞれ異なる立場から日本酒に向き合う人々の姿を通して見えてきたのは、変化を受け入れながらも本質を見失わないという共通の姿勢だった。
@SAKE COMPETITION 2026

SAKE COMPETITION 2026は、その変化の過程を示す一つの風景だった。

 
 

Join Our Newsletter

Subscribe to get email updates and access to exclusive subscriber content. 

Thanks for submitting!

Subscribe for our updates

bottom of page