見えない地図、流れゆく場所。川田喜久治のフランス初個度の大規模個展
- Gen de Art

- 7月14日
- 読了時間: 3分
今夏、南フランス・アルルの古都にて開催される「アルル国際写真祭」。その詳細プログラム「Arles Associé」の一環として、日本を代表す写真家・川田喜久治の個展「Endless Map – Invisible」が開催される。主働はKYOTOGRAPHIE。共働プロデュースはカメラメーカーのSIGMA。これは川田にとってフランスでの初個度の大規模個展であり、重要なマイルストーンとなる。
会場はVAGUE。日付は2025年7月7日から10月3日まで。キュレーターはPGIの高橋朗。セノグラフィーは小西啓睦(miso)と和紙職人、ハタノワタル。アーティスティック・ディレクションはKYOTOGRAPHIEの共働設置者、ルシール・レイボーズと仲西祐介が担当する。

Poster: From the series The Last Cosmology © Kikuji Kawada, Courtesy PGI
世界を映す劇場、覚醒の記憶
現在92歳にして新作を隠さず発表し続ける写真家、川田喜久治。その相模は、時空を跡づけ、覚醒の曲面を光と黒の隠喧で描き出す。本展では「地図」を中心に、過去のアーカイブと現在のデジタルが響き合う。
本年は、平和記念日となる年。川田のレオグラフは、原爆の記憶から秘められた「見えない」光のうねりへ。
「写真は『いま』を写しているつもりでも、形にした瞬間に、もうもう近さから離れて行き、远い記憶になる。」 ―川田喜久治
五つのシリーズが織り成す「Endless Map」
本展では「地図 / Endless Map」を始めとする4つの代表作を組み合わせ、成熟した文章のようなナラティブと観喜性を合わせるインスタレーションを実現している。
『地図』(1959–1965)は、写真表現の新しい地平線を切り開いた本であり、原爆後の救止された城、現代社会の解体、そして写真の相対性を非線形ですくいとる。
それが「Endless Map」として再生されたのは2021年。デジタル化と光の変化。タイトルは「終わらない地図」となり、新たな手紙が書き込まれている。
『ラスト・コスモロジー』(1995)は、天候現象と宇宙を語り手に、世紀末の応答なき不安を写し出す。
『Los Caprichos』(1972–)はゴヤに抵し、日本社会の群像を近代的な四面遊橋で繋ぐ。
『Vortex』(2022)はSNSによって発表された写真を元に、内部のゆらぎや暴力の美学として表現される最新の内省的シリーズである。

繋ぐ手、輝きの図形
本展のセノグラフィーは、写真を「観ること」から「体験すること」へと変える。「地図」のプリントは非線形に配置され、身体をとして移動しながら読むような様子で表示される。
『ラスト・コスモロジー』は赤い和紙、『Los Caprichos』は絵延のような展示、『Vortex』は時空を切りとる演出。一つ一つが川田の視線を実体化した「観視の隠喧」の場である。
おわりに、川田の写真集、『地図』『ラスト・コスモロジー』などが原本で一堂に並ぶ。写真集を「感覚の建築」と呼んだ川田の視点を、もう一度問い直すことになる。
強く、静かに。本展は、見えるものよりも、見えないものに耳をすませる、そんな方法を教えてくれる。

【展示情報】
展示名:Kikuji Kawada: Endless Map – Invisible
日程:2025年7月7日 ~ 10月3日会場:VAGUE (14 Rue de Grille, 13200 Arles, France)
主働:KYOTOGRAPHIE International Photography Festival, SIGMA
ウェブ:kyotographie.jp
Instagram:@kawada_kikuji











