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抹茶を超えて在スイス日本国大使館、EHLで日本茶文化交流イベントを開催

  • 6 日前
  • 読了時間: 3分

3月30日の午後、ローザンヌ郊外の丘の上に立つEHLホスピタリティ・ビジネス・スクールのキャンパスに、約150名が集まった。ファッション、食品輸入、小売——業界も国籍も異なる参加者を一つの場所に呼び集めたのは、在スイス日本国大使館が主催した日本茶文化の交流イベントだった。

 


大使館が発した問い

 

開会の挨拶に立った飯島俊郎大使は、このイベントを企画した背景を語った。近年スイスでは抹茶への関心が急速に高まっている。しかしその関心は、ともすれば「日本茶=抹茶」という単一のイメージに収斂しがちだ。煎茶、茎茶、焙じ茶——それぞれが異なる製法と風土を持ち、日本人の日常に深く根ざしてきた茶の多様性を、スイス社会に正確に届けたい。大使館の問題意識はそこにあった。

 

会場を提供したEHL GroupのValues Ambassador、Christophe Laurentは歓迎の言葉の中でこう述べた。「日本茶は茶以上のものだ。技術、知識、作法、そして共に飲む時間——その背後に文化がある」。EHLが掲げる「Excellence」「Family」「Learning」という価値観と、日本のもてなしの精神との親和性を指摘したその言葉は、この場の設定に自然な説得力を与えた。


 

一杯から始まる、文化の手ほどき

 

講演と茶の実演を担ったのは、スイス日本茶親善大使の須美ナツミ氏。2018年より日本茶インストラクター協会の認定を受け、レマン湖畔を拠点に普及活動を続けている。着物姿で登壇した彼女は、深蒸し煎茶、茎茶、焙じ茶の三種を順に供しながら、問いかけを交えて参加者を引き込んだ。

 


「日本では、誰かを訪ねれば二杯目も勧められるものだ。茶は思いやりを示す、ごく普通の方法だ」。儀礼としてではなく、生活の習慣として茶を語るその言葉は、ヨーロッパの参加者に新鮮な視点を与えた。続いて全日本製茶輸出協同組合の松本康晴氏が登壇し、茶産地の地図と輸出の現状をスクリーンに映し出しながら、産業としての日本茶の現在地を示した。

 

イベントの途中には抹茶の点て方のデモンストレーションが行われ、講師が参加者の前で抹茶を点てて供し、飯島大使をはじめ参加者はその所作を間近に見ながら味わった。

 


11のブースが結んだもの

 

講演プログラムの後、会場は交流の場へと移行した。大使館・ジュネーブ総領事館、JETRO、京都おぶぶ茶苑、末永製茶、MARUtCHA、伊藤園ヨーロッパ、寿月堂パリ、光寿園パリ、玉木茶、堀口製茶(若園)——国内の茶農家からヨーロッパに拠点を置く事業者まで、11のブースが日本茶流通の現在を一つの空間に可視化した。

 

参加者はブースを回りながら、生産者や専門家と直接言葉を交わした。茶葉の産地を尋ねる者、製品ラインナップを手に取る者。大使館ブースでは焼酎の緑茶割りが提供され、茶を日常的な飲料文化として提示する試みも添えられた。

 


場が終わった後に残るもの

 


抹茶という言葉がヨーロッパの日常に浸透して久しい。しかしこの日、大使館が届けようとしたのはその先だった。深蒸し煎茶の鮮烈な緑、茎茶の甘みある余韻、焙じ茶の静かな焙煎香——それぞれの茶が持つ時間と土地の記憶を、参加者と静かに分かち合うこと。一杯の茶を介した対話の積み重ねが、スイスにおける日本文化理解の土台をつくっていく。

 

取材・文:Olivia(ローザンヌ、2026年3月)

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