東京国際映画祭 2025:物語が国境を越える、映画の祝祭へ
- Gen de Art

- 11月19日
- 読了時間: 3分
更新日:11月21日
2025年10月27日から11月5日まで、東京・日比谷、丸の内、有楽町エリアを中心に開催された第38回東京国際映画祭(TIFF)は、184本の上映作品と約6万9千人の観客を動員し、日本最大級の映画祭としての存在感を改めて示した。一般観客と業界プロフェッショナルの双方に開かれた同映画祭は、東京という都市を文化的な交差点へと変貌させた。
オープニング作品には坂本順治監督の伝記ドラマ『Climbing for Life』、クロージング作品にはアカデミー賞監督クロエ・ジャオ(Chloé Zhao)による『Hamnet』が選ばれ、国境と文化を超えるストーリーテリングの豊かさを観客に伝えた。

国際的なスターと都市の祝祭性
ジュリエット・ビノシュ、ファン・ビンビンら世界的俳優が来日し、レッドカーペット上映や屋外プレミアを通して、日比谷・丸の内の街並みが映画祭そのもののステージへと姿を変えた。都市の景観と映画文化が融合し、東京がアジアの映像文化を牽引する中心地であることを強く印象づけた。
世代と文化をつなぐ映画の力
コンペティション部門では、アイデンティティ、歴史、母性、移動といった普遍的テーマを扱う作品が多く選出された。
特に、カンボジア・ブノン族の生活に迫るドキュメンタリー『We Are the Fruits of the Forest』、言語と記憶の関係を詩的に描いた『Mothertongue』が高い評価を得た。
また、「アジアの未来」部門や学生映画部門では、新進監督の発掘と育成に重点が置かれ、TIFFが若い才能の跳躍台としても機能していることを示した。
なかでも、陳可辛(ピーター・チャン/Peter Chan)監督によるマスタークラスは大きな注目を集めた。プログラミング・ディレクター一山章三氏が聞き手を務め、文化を越境する物語の語り方、映画作家としての責務について深い洞察が共有された。

卓越を讃える受賞式
11月5日に行われた授賞式では、映画祭の精神と時代性を反映する多様な作品が表彰された。
• 東京グランプリ(東京都知事賞):
Annemarie Jacir 監督『Palestine 36』
──1936年パレスチナ蜂起を題材とした歴史ドラマが受賞。
• 観客賞:
坂下雄一郎監督『Blonde』
• 審査員特別賞:
リティ・パン監督『We Are the Fruits of the Forest』
• 最優秀監督賞:
アレッシオ・リゴ・デ・リギ & マッテオ・ゾッピス(『Heads or Tails?』)
張律(チャン・リュ/『Mothertongue』)
• 最優秀女優賞:
福地桃子、河瀨直美(『Echoes of Motherhood』)
• 最優秀男優賞:
王傳君(ワン・チュアンジュン/『Mothertongue』)
• 黒澤明賞:
李相日(イ・サンイル)監督/クロエ・ジャオ監督
• 生涯功労賞:
山田洋次監督/吉永小百合
いずれの受賞者も映画文化の過去・現在・未来を象徴する存在であり、同映画祭の多様性と国際性を体現した。
映画祭が創り出す “都市全体の文化体験”
上映、トーク、交流、産業カンファレンスが有楽町・日比谷周辺で同時多発的に展開され、観客、映画人、クリエイターが自然に出会い、対話し、互いに影響し合う環境が形成された。
映画業界向けプログラムである「TIFFCOM」と連動し、四日間のプロフェッショナル向けセッションに続き、三日間の一般公開が行われたことで、映画祭は“都市の祝祭”としてより開かれた姿を示した。
TIFF 2025が残したもの
第38回東京国際映画祭は、国際性、多様性、実験精神、創造性、世代間対話というキーワードを強く提示した。
社会的テーマに深く踏み込む作品と、革新的な実験映画が共存し、巨匠監督と新鋭クリエイターが同じ舞台で称えられる構図は、TIFFが目指す方向性を象徴している。
映画を通じて世界の異なる文化や視点が交わり、都市・観客・作り手が一体となる場。それがTIFFの真価である。
Red Carpet @TIFF
プロモーションメッセージ
映画が世界をつなぐ場所──それがTIFFです。
国内外の物語と視点が交差し、東京の中心で“映画の未来”が語られました。
次回の東京国際映画祭も、どうぞお見逃しなく。
この瞬間に、映画と出会ってください。


























