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Paris+ par Art Basel 2023:「Conversations」のキュレーター、ピエール=アレクサンドル・マテオとシャルル・テイスー

今年で2回目の開催となるParis+ par Art Baselでは、光の街パリが再び大規模なパブリックプログラムを開催します。このプログラムは無料で一般に開かれ、壮大な展示、特徴的なインスタレーション、刺激的な会話や討論の場を提供します。特に注目されてるのが、ポンピドゥー・センターと共同で開催される「Conversations」プログラムです。今年のキュレーションは、ピエール=アレクサンドル・マテオとシャルル・テイスーが担当します。アバンギャルドの先駆者を検討し、アート収集とファッションの相互関連性の掘り下げや、パリ、マグリブ、カリブ海における結びつきの解明まで、現代文化の議論の多岐にわたる魅力的な探求となるでしょう。

Pierre-Alexandre Mateos et Charles Teyssou, curators of the Paris+ par Art Basel Conversations program, realized in collaboration with the Centre Pompidou  Photography by Marion Berrin for Paris+ par Art Basel. Courtesy of Paris+ par Art Basel.

Pierre-Alexandre Mateos et Charles Teyssou, curators of the Paris+ par Art Basel Conversations program,

realized in collaboration with the Centre Pompidou

Photography by Marion Berrin for Paris+ par Art Basel. Courtesy of Paris+ par Art Basel.

 

ピエール=アレクサンドル・マテオ氏へのインタビュー


ポンピドゥー・センターとのコラボレーションによる、今年の「Conversations」プログラムのキュレーションのインスピレーションをお聞かせください。また、どのようなテーマやコンセプトの探究したのですか?


2023年のParis+ par Art Basel Conversationsは、大衆文化とアバンギャルドのつながりをテーマにしています。例えば、ウォルト・ディズニー・スタジオの100周年を記念して、そのダークな側面や様々な世代のアーティストに与えた影響など、そのヘリテージを探ります。ドラッグやキャンプが視覚芸術やパフォーマンスアートに与えた影響をめぐる対話も行われ、パスティーシュ、キッチュ、アイロニーが美学的・政治的戦略としてどのように利用されてきたかを検証します。



もうひとつの大きなテーマは、フランス語圏のアバンギャルドを称えることです。始めに、詩人、作家、劇作家及び芸術家として活躍したアントナン・アルトーが取り上げられます。彼は、二度の世界大戦に肉体と精神を動かされ、観客の身体を通して存在の残酷さを伝えることのできる芸術形式の制作を擁護しました。私たちは、ウクライナ戦争やヨーロッパ全土におけるナショナリズムの台頭を受け、現代において彼の考えを実践する重要性を認識しました。彼の作品と現在の状況の関連性を強調し、彼のヘリテージを共有したいと考えたのです。次に、親密なものと政治的なものを結びつけ、同世代の作家たちとはまったく異なる方法で社会問題にアプローチした故シャンタル・アケルマンです。彼女が現代のアーティストやキュレーターに与えた影響を検証することで、今日の世界において彼女が果たした影響力を調査したいと考えました。このプログラムの中心は現代アートですが、私たちは様々な分野との間に架け橋を築くことを目指しています。


最後に、コンテンポラリー・アート・プラクティスと、それに対する現代の反応をめぐる議論が私たちにとって極めて重要であるとすれば、アーティストと、アート界全体を動かしているメカニズムに焦点を当てることが、このプログラムの要となります。その為、最初のパネル・ディスカッションである「Premiere Artist Talk」では、イギリスのアーティスト、アイザック・ジュリアンに敬意を表し、テート・ブリテンでの彼の代表的な展覧会「What Freedom is to Me」(2023年)について語ってもらいます。また、「The Artist and The Collector」では、2人の人物の知的な相互関係を表面化することを目的としています。最後に、「10 things to know about buying art in 2023」では、収集における注意点を明らかにします。


このプログラムは、ウォルト・ディズニー・スタジオからドラッグ・カルチャーまで、現代の神話の領域を掘り下げています。現代の文化的な物語を形成する上で、これらの神話はどのような役割を果たすと考えていますか?また、この神話は「Conversations」プログラムの大きなテーマとどのように結びついているのでしょうか?

この問いへのアプローチ方法の一つが、今回招待した思想家のノーマン・M・クラインと彼の著書『The Vatican to Vegas』です。この本は、ルネサンス、バロック初期のイタリアからアメリカのエンターテインメント産業、映画、さらにはデジタルの歴史を双方向型でたどっています。教会の壁からテレビのブラウン管、そしてスマートフォンへの移行は、神話が何をどのように機能させるかを一変させました。1990年代に育った子供たちにとって、初めての感動は絵画ではなく、『白雪姫』や『ジュラシック・パーク』、あるいは任天堂の『スーパーマリオ64』で遊ぶことでした。恐怖、冒険、自由、そしてただひたすら不思議なもの。エンターテインメント産業の狭間に、複雑な実験空間を見つけることができます。アートは美術館やギャラリー、財団の中だけにあるものではないのです。私たちは、「Conversations」プログラムを通じて、この考えをより多くの観客に伝えたいと考えています。


現代アートや文化が大きな変化の波を迎える中、現在のトレンドを反映しつつ、観客に新鮮な視点を提供するために、どのようにプログラムのキュレーションを行なっていますか?

トレンドにはあまり興味がありません。10年後、誰かがYouTubeでアートバーゼルの「Conversations」のビデオを閲覧した際に、その人が自分のこだわりや希望、恐怖に共鳴する何かを見出すことを望んでいます。アートフェアに参加するずっと前から、美大生としてアートバーゼルの「Conversations」を見てきた私たちは、ある種のディスカッションが現代の問題と呼応していることに驚きました。私たちは可能な限り、観客に最新のトレンドではなく、現代の肉体と骨格を体現するものを提供しようと努めています。


 

シャルル・テイソー氏へのインタビュー


カンバセーションズ・プログラムのキュレーションを務めるのは今年で2回目となりますが、昨年と比較して、参加者はどのようなユニークな視点や新しい要素を期待することができますか?

まず第一に、「Conversations」は、世界で最も重要な文化施設のひとつであるポンピドゥー・センターで開催され、ポンピドゥー・センターとのコラボレーションにより実現します。例えば、ポンピドゥー・センターの初代ディレクター、ポントゥス・フルテンのヘリテージを再活性化する「パリ-カリブ海」、彼の展覧会シリーズ「パリ-ニューヨーク」(1977年)、「パリ-ベルリン」(1978年)、「パリ-モスクワ」(1979年)などです。今回のパネルでは、欧米の首都からカリブ海の群島へと焦点を移します。もうひとつの大きな特徴は、「Conversations」のプログラムにパフォーマンスが含まれることです。各日の最後に、ポンピドゥー・センターのマニフェスタシオン・アート・エ・ソシエテの責任者であるキャロリーヌ・フェレイラとのコラボレーションを通じて、キュレーターのジュリー・ブーコブザ、アーニャ・ハリソンらが選出したパフォーマンスが一般に公開されます。紹介されるアーティストは、アンシア・ハミルトン、ブラックヘイン、ミリアム・コングスタッドです。


テイソー氏が探求しているトピックのひとつに、アート収集とファッションの接点があります。一見異なる2つの領域は、互いにどのように影響し合っているのでしょうか。また、参加者にはこの対談からどのような洞察を得てほしいですか?

Art Basel Conversationsシリーズは、その文脈から豊かさを引き出しています。当初から、このプログラムのビジョンは、パリの文脈とパリのヘリテージに結びついていました。パリは陳腐なイメージやファッション業界の複雑さを超えて、変わることなくファッションの首都であり続けています。その為、歴史のようにアート界を育み、そこからインスピレーションを得てきたこの世界と何らかの関係を築くことは、私たちにとって大切なことでした。コム・デ・ギャルソンとシンディ・シャーマン、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館でのマルタン・マルジェラの展覧会、あるいはシェイン・オリバーのパフォーマンスへの進出は、アートとファッションの多くのコラボレーションのほんの一例に過ぎません。この対談は、異なる分野で発展してきた情熱、関心、ビジョンを持つ2人の人物の芸術的相関が、私たちに洞察を与えてくれると考えています。


パリ、マグレブ、カリブ海のつながりを探るのは魅力的な試みですね。具体的に、これらの多様な文化のどのような側面にスポットを当てる予定ですか?また、これらのつながりは、より包括的で相互接続されたグローバルな文化対話にどのような意味があると考えていますか?

ヨーロッパ中心主義的な言説から脱却して、フランスの植民地時代の過去を認識し、世界のさまざまな首都や地域間の交流を強調することが、Paris+ par Art Baselの「Conversations」の中心的な使命です。1966年にアブデラティフ・ラアビがラバトで創刊したモロッコのアバンギャルド雑誌『スフレ』の歴史や、今年のマルセル・デュシャン賞候補でもあるブシュラ・ハリリの作品を通して、フランスと北アフリカの間で発展してきた様々な芸術運動について掘り下げます。カリブ海に焦点を当てた理由については、この対談の司会者であるキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストと、マリーズ・コンデやシモーヌ・シュヴァルツ=バルトといったカリブ海の作家への憧れを常に共有してきたからです。また、カリブ海の神話や文化は、ベルトラン・ボネロやクレール・ドニのような映画作家にも大きな影響を与えています。


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