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水のラインが織りなす幻想世界:日本人アーティストobの個展「Water Line」

香港の街を見下ろすペロタンギャラリーで、日本人アーティストobの個展「Water Line」が開催されています。2024年9月14日から11月9日まで続くこの展覧会は、水をモチーフに、現実と夢の境界線を巧みに描き出す作品群で構成されます。


ob, Friends at Sea, 2024, Oil, oil pastel, colored pencil on canvas, 162 × 194 cm | 63 3/4 × 76 3/8 inches.  ©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin.

ob, Friends at Sea, 2024, Oil, oil pastel, colored pencil on canvas, 162 × 194 cm | 63 3/4 × 76 3/8 inches.

©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin.

 

水が紡ぐ物語

obの作品世界は、穏やかな色彩と霞がかった風景、そして大きな瞳を持つ寡黙な少女たちによって構成される静謐な空間です。オイルパステルで描かれた柔らかな輪郭線は、まるで水分を含んだかのような青い霞を形成し、鑑賞者の心に静かに染み入ります。「今回の作品は、去年10月に香港へ行った時の体験が元になっています。その漁村で見た太陽と空の景色が水上生活と融合していて、そこにインスパイアされました。地上に生きる人と水上で生きる人で生活が分かれている様子から、まず人魚が頭に浮かびました」

 

この経験から生まれた作品群では、水が単なる題材を超えて、表現のメディアそのものとなっています。睡蓮の咲く池、ピクニック中に垣間見える遠い海岸線、ボートで渡る湖、水で満たされた浴槽など、水は様々な形で登場し、obの物質に対する本質的な想像力を運ぶ媒体となっています。

 

また、彼女の作品において、水と目は密接に結びついています。「ずっと自分が初期の時から大きな目の人間を描いていました。ただ、描いていくうちに、目を描く理由を考えるようになりました。一方で、水も同様に昔から描いていたのですが、ある段階で目の中にも水があるということを意識するようになりました」

 

人とのコミュニケーションやアイコンタクト、そして鑑賞者と作品が見つめ合う瞬間、それらすべてが水面を覗き込むような体験だとobは感じています。「私にとって、目を描くことと水を描くことは似ている」とobは語ります。

 

ob A Town of Fish, 2024 Oil, oil pastel, colored pencil on canvas 130.3 × 130.3 cm | 51 5/16 × 51 5/16 inches Unique Current location: Hong Kong ©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

ob, A Town of Fish, 2024, Oil, oil pastel, colored pencil on canvas, 130.3 × 130.3 cm | 51 5/16 × 51 5/16 inches.

©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin.


 1 2 3 4 5  ob Picnic at the Lake, 2024 Oil, oil pastel, colored pencil on canvas 112 × 162 cm | 44 1/8 × 63 3/4 inches Unique Current location: Hong Kong ©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

ob, Picnic at the Lake, 2024, Oil, oil pastel, colored pencil on canvas, 112 × 162 cm | 44 1/8 × 63 3/4 inches.

©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin.


不確かさの美学

obの描く世界では、人魚が水辺で花を愛おしみ、少女たちは白い翼を生やして池の白鳥と一体化します。また、長い三つ編みが水中の生き物たちと戯れる様子も特徴的です。同時に、この絵画の中には香港ならではの風景を認識することができます。ハーバービュー、日常の窓辺の景色、飛行機の窓から外を眺める孤独な人影など、こうした描写は否応なく現実に引き戻す。

 

「人間の心の構造、自然環境、生物の身体システムは、生と死を繰り返すので、不確かな状況は避けられません。私は登場人物を、何かに落ち着く前のさまざまな可能性を含んだモチーフとして象徴的に扱い、自分自身や他者にとってより良い状況で生きていくにはどうすればよいかを考えています」

 

内なる感情との対話

今日のデジタル社会において、obの作品は静かな内省の時間を提供しています。「絵画は他のメディアに比べていつでも鑑賞できるものではないですが、その分見る人の見方によって見え方が異なります。生活をしていると、どうしても日々の時間に追われて内省の時間を作ることが難しいですが、それでも作品を鑑賞している時は鑑賞者自身の物語が活発に動き出すような物語を作りたいと思っています」

 

obの作品は、不確かさに満ちた世界に向き合い、目に見えるものと見えないものを想像力の風景の中で融合させます。そこには、夢だけが常に存在するという真理が隠されています。彼女の創造は、私たちを具体的なものから解放し、最も深い幻想や感情に縛られることなく従うことを可能にします。これらの想像力豊かなイメージは、純粋な感情に満ち溢れ、夢から覚めた後も私たちに奥深い強さを残します。


View of ob's exhibition, "Water Line", at Perrotin Hong Kong, 2024 Photo: Ringo Cheung

©2024 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin


ob

1992年生まれのobは、2010年頃に一気に台頭した日本のSNS世代アーティストの中でも最重要な存在の一人。大学生時代に京都を中心に活動し、イラストコミュニケーションサービスpixivを通じて同世代の作家たちと交流。「wassyoi」という展覧会で脚光を浴び、2013年にはshu uemuraとのコラボレーションも実現。ゲームやSNSを身近に育った新世代アーティストであるobは、大きな瞳の少女をモチーフに繊細で幻想的な世界を表現します。近年は海外のアートフェアにも多数出展し、国際的な評価も高まるアーティストです。

 

Water Line


会期:2024年9月14日 – 11月9日


会場:PERROTIN HONG KONG

     (807, K11 ATELIER VICTORIA DOCKSIDE, 18 SALISBURY ROAD, TSIM SHA TSUI)


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