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ジョルジュ・ノエラ ヴォーヌ・ロマネ 若き醸造家の想いと、受け継がれゆくもの

ブルゴーニュ地方の中心、コート・ド・ニュイにあるヴォーヌ・ロマネのドメーヌ・ジョルジュ・ノエラ。歴史ある小さなワイナリーですが、ピノ・ノワールによってその名が知られるようになったのはつい最近の出来事です。少し前まではネゴシアン(ワインの流通業者)として知られていましたが、2010年に現在の当主が若くしてドメーヌを引き継ぎ、そこからジョルジュ・ノエラでのワイン造りが始まりました。


祖母の引退の決断とともに、わずか20歳で当主となったマキシム・シュルラン。ジョルジュ・ノエラの名を世間に広め、瞬く間に才能ある醸造家としての評価を獲得し、現在はワイン界で強力な存在感を放っています。

若くして醸造家というキャリアを歩み始めたことや、過去10年間に起きたワイン界の変化、そして今日では世界的に知られるジョルジュ・ノエラのピノ・ノワールのインスピレーションについて、マキシム・シュルラン氏に話を伺いました。


マキシム・シュルラン

現在と過去

ドメーヌの創設者ジョルジュ・ノエラは、ヴォーヌ・ロマネのワイン事業主の一人、シャルル・ノエラの甥にあたります。ジョルジュ・ノエラが始めたドメーヌは、当初はブルゴーニュの主要ワインメーカーに収穫物を販売することを専門としていました。


当時70歳だったマキシムの祖母、マリー・テレーズ・ノエラが、引退し穏やかな生活を送りたいと希望したため、若くしてワイン醸造家の道を歩み始めたマキシム。育ちはシャンパーニュ地方でしたが、ボーヌのワイン醸造学校、リセ・ヴィティコールでワインについて学びながらブルゴーニュのテロワールに親しみ、家業を継ぐ前に、ボーヌの有名なワイナリーで働くという経験も得ました。


「若くして、やりたいことをやるチャンスを得ました。まず1番の目標は、自分のワインを造ること。そしてそれは簡単なことだと思っていました」


「たぶんその時はまだ、自分が何を造ることができるのか気づいていなかったんです。2011年になって、私のワインを求める人が増え、すべてが変わりました。驚いたし、良いワインを造らなければ、というプレッシャーになりました」


彼がワイン造りを始めた頃と、ここ数年の状況を比べると、以前ジョルジュ・ノエラはネゴシアンとして知られていたため、顧客も少なく知名度も低く、厳しい状況が続いていたのだそう。そのため、ジョルジュ・ノエラの名でワインを造り始めたばかりの頃は、まだプレッシャーも少なかった、と話します。


ジョルジュ・ノエラ

ワインを通じて喜びを伝える

彼自身のワインへの想いやインスピレーションについて語る中で、今の時代の顧客は、20年前にワインを買っていた人たちとは異なるという話をしてくれました。こういった変化を考慮して、毎年アプローチを見直し、調整しているそうです。


「以前は、新しい世代のためにワインを造り、ワインが瓶の中で完全に熟成するのを20年間待つ、という考え方でした。しかし今、顧客は新鮮さとバランスの良さを求めています。そして今の私の考えは、今も、そしていつでも、良いワインを造ることです」


「ワインを飲むときの喜び、新鮮さ、口の中に広がるエネルギー。これが私のインスピレーションです」


さらに「自分自身が飲みたいと思うワインからも、インスピレーションを受ける」とも語るマキシム。


「私にインスピレーションを与えてくれるのは、世界中の素晴らしいワインです。例えば私の住むヴォーヌ・ロマネ村だけでも、ロマネ・コンティ、ルロワ、シルヴァン・カティアール、アンリ・ジャイエといった数々のドメーヌから、ブルゴーニュワインのヒントをもらっています。でも同時に、ポートワイン(ポルトガルの酒精強化ワイン)やドイツのリースリングからアイデアをもらうこともあります」



新しい世界の挑戦

過去と現在、そして未来に話を戻し、ドメーヌが向き合わなければならない気候変動における課題についても、マキシムは話をしてくれました。

「今もっとも重要な課題は、気候が急速に変化する中で、世界に適応していくことです。将来を見通し、ブドウ畑の価格がどうなるかを把握することはとても難しくなってきています」


さらに、地球温暖化に対する課題は、ワインメーカーにとって文化と想いの両方を適応させる必要も出てくる、とも言います。

確かに気温が上がるとブドウは早く熟すので糖度が上がり、結果としてワインのアルコール度数も高くなります。「私にとってピノ・ノワールは、新鮮さと純度がすべてです。それ以外のものは造りたくありません」と彼は話します。

また、ワイン造りを始めた2010年頃と比べると、今日のワイン業界はますます複雑になっているそう。「2010年はすべてがシンプルで、ストレスもなく、自分が何をしたいかもわかっていました。でも今は経験が増えるに連れて、どんどん疑問が湧いてくる。でもこうやってワインを造る方がおもしろいと感じています」


クラシックなワインを造るために新しいアプローチをとっていく中で起きるワイン造りへの観念の変化が、彼自身に最もインスピレーションを与えるそうです。今後の展望については「素晴らしいテロワールをたくさん発見するため、より賢く動いていきたい」と話してくれました。


試みのひとつとして彼は2020年、ピノ・ノワールに特化したブルゴーニュのもうひとつのアペラシオン、ボンヌ・マールとともに動き始めました。簡単ではないことは承知の上で、ブルゴーニュでワイン畑を広げ、そしてこの地域で最高のワインを造り続けるという目標を掲げ、インタビューを締めくくってくれました。





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