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「器は料理の着物」 冨澤浩一が魅せる日本料理

とても優しい笑顔が印象的な山形県出身の日本料理人 冨澤浩一さん。日本料理よし邑の総料理長・支配人と

して腕を振るう傍ら、現代の名工や農林水産省任命の日本食普及の親善大使として国内外で活躍されています。そんな冨澤さんに、お話を伺いました。


冨澤浩一

冨澤さんが日本料理の料理人を目指したきっかけ、修行時代の印象に残っている出来事を教えてください。


昔、萩原健一さんの「前略おふくろ様」ってテレビドラマがあったんですけど、それを観た時に「これしかないな」と思いました。他に興味があるものってありませんでした。

実家の周りに料理屋さんがたくさんあって、脇道を通るとちょうど調理場が見えていました。幼少期はその板前さんの姿への憧れがありましたね。洋食やイタリアンや中華もあったけど、日本料理を勉強したいとだけ思って、気持ちが変わることはありませんでした。


僕は山形生まれで、最初に修行に入ったのは京都だったんです。野菜も魚も知らない食材、初めて見る食材だらけですごく衝撃的だったことを覚えています。食べたら美味しくて「もっと知りたい!」と思いましたね。包丁の繊細な使い分け、技術もとても驚きました。自分も早くその技術を習得したいと思いました。

休みでもお店に行ったりしていました。すると「ちょっと横でこれやってみろ」とやらせてもらったりして、厳しい世界ですから、大変だったけど、楽しかったですね。


日本料理よし邑

「器は料理の着物」という冨澤さんの信条について詳しく教えてください。


これは日本を代表する芸術家の北大路魯山人先生の格言ですね。料理家、画家であり、陶芸家であり、書もされる美食家です。我々料理人にとっては本当に憧れの方です。北大路魯山人先生について書かれた本にあった言葉でした。「器は料理の着物」って当たり前。本当に当たり前なんですけど、とても印象的で大切にしている言葉です。

職業柄、器の作家さんと知り合うことが多いので、作家さんの人柄や個性のにじみ出た器を使って、自分の日本料理の色を伝えることが出来ると思い、いつも心がけています。器を先に選ぶときもありますし、献立から選ぶこともありますね。


器も、若い作家さんだとエネルギッシュさだったり、女性の作家さんだとあたたかみ、優しさを感じられたりして、そんな個性がとても素敵です。



冨澤さんが日本料理を通して伝えたいこと・知ってもらいたいことは何でしょうか。

やっぱり日本料理と四季って切っても切り離せないですよね。素材の活用や旬、ここは意識しているところです。そこから食べやすいか、栄養のバランスを考えてお出ししないと、と思っていますね。海外でも健康料理としての日本食はとても注目されていると思いますが、栄養のバランスも、旬のものを使うことも非常に重要です。


また、和食に限らずですが、技術もとても大切です。包丁ひとつとっても、繊細な技術が生み出す芸術があります。盛り付けも含めて美的感覚を研ぎ澄まされていないといけないという想いがあります。


日本食にまつわるところから言えば、お茶とお花は、全て日本料理に通じることがありますので、これはぜひ知ってもらいたいと思います。日本料理の職人としても、この二つを知らずして日本食を提供することはできません。


Photos/ 創業50周年特別会席(提供終了)「縁-YUKARI-」


日本食普及親善大使としての活動で印象に残っているエピソードを教えてください。


中国は各地に行かせてもらって、パラグアイでは日本料理の授業をやらせて貰いました。そのクラスの名前自体が「SUSHI」なんですよ。寿司の根強さを感じました。日本の懐石料理やコースの流れなどを教えたのですが、結局最後の質問時間で聞かれたのは「寿司の握り方を教えてください」でした。食材によって包丁の使い方・種類も違うし、日本料理としての寿司の印象は強いのでしょう。気づきのある貴重な時間でした。


また大使館やショッピングモールでも、日本料理の試食や意見を直接聞いたりしました。海外の方にも日本食を「おいしい」と言ってもらえるのは、やはり非常に嬉しかったですね。

冨澤さんが心掛けていること、実現したいことを教えてください。


よし邑ではランチやお弁当もご用意していますが、高い金額を出さないと良い日本料理が食べられないということはないと思っています。日本料理ならではの繊細な技術と食材の使い方を工夫して、どれだけの料理を提供してあげられるかということを心がけています。日本料理の職人は色んな技を皆さん使いこなせると思いますから、そういう日本料理をお客様に魅せてあげたいと思っています。



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